半世紀前のスコアが偶然出てきました！
最近になって、自分が初めて買ったレコードが何であったかを思い出してみました。
レコード全盛の時代でしたから随分と古い話ですが、好きなのは大抵、ポピュラー音楽といった系統の洋楽でしたが、当時はレコード店も町内に一軒あるかないかと云う感じでした。
そのとき買ったレコードは、確かビセンテ・ゴメスの「愛のロマンス」Romance de Amor だったように思います。
「愛のロマンス」という曲は、当時「禁じられた遊び」という映画音楽という曲名で一般に知られていたのですが、ギター演奏としてナルシソ・イエペスが有名でした。
同じ「禁じられた遊び」という曲名では、ビセンテ・ゴメスのフラメンコ調のギター演奏もラジオからよく聞こえてきていました。
「愛のロマンス」Romance de Amorの原曲はスペインの古い民族音楽だったらしく、これをフラメンコギター奏者のビセンテ・ゴメスが情熱的な曲想に編曲したのでした。
ゴメスとイエペスとでは同じ原曲同士であっても、その演奏法も曲想も随分と違っていたのですが、どちらも映画音楽ということでした。
イエペスの「禁じられた遊び」の演奏は、緩やかでもの悲しい雰囲気でした。
購入するときイエペスの「禁じられた遊び」よりは、ゴメスの「愛のロマンス」の演奏の方がメリハリが効いていてより情熱的に感じられ、そのときは彼のレコードの方を選んだのを覚えています。
長い間このレコードは大事にしていたのですが、デジタル時代になってから処分してしまっていました。
最近になってアマゾンからゴメスの曲を購入してみたのですが、意外にもアナログからデジタル化したその音質にはがっかりしてしまいました。
平べったく削ぎ落とされたように聞こえるその音質は、かってのものとはまったく違ったものでした。
音質と云うことでしたら、むしろyou tubeから探した方がずっといいものが見つけられました。
このRomance de Amor という古い曲を最初に映画音楽として使ったのはゴメス自身でした。
それはアメリカ映画の中で使われていて、「血と砂」（１９４１）という闘牛士が出てくる映画の間奏曲として演奏されたのでした。
この映画作品の音楽を担当していたゴメスは、映画の中でも楽団員の演奏者として登場していて、映像の中ではギターを演奏しています。
その曲が「愛のロマンス」であり、彼の編曲でもあったのです。
映画では、主役の闘牛士が幼馴染の娘カルメンに窓の下から求愛する名場面で、このRomance de Amor がバックで演奏されています。
一方の「禁じられた遊び」（１９５２）は、戦争で孤児となった5歳のフランス人少女の運命を描いた作品で、フランス映画でした。
もの悲しいメロディは、映画の普及と共に世界的にもヒットしました。
映画「血と砂」
ゴメスの演奏は、フラメンコギター奏者だけにその迫力のある情熱的な演奏が印象的です。
この映画のストーリーというと、貧しい靴屋の息子から修行を重ね、若くしてスペイン随一の人気闘牛士になった主人公フワン（タイロン・パワー）は、幼馴染みの娘カルメン（リンダ・ダーネル）に求婚して二人は結ばれます。
二人は幸せを掴んだかに見えたのですが、純情なフワンは闘牛を観戦に来ていた美しい有閑マダム、ドーニャ・ソル（リタ・ヘイワース）に激しく誘惑され、ついには妖艶なマダムの色香に溺れてしまいます。
愛欲の虜となった主人公フワンは、妻カルメンとの真実の愛を見失ってしまうのです。
「血と砂」は何度か映画化されたことのある古典的な名作です。
「愛のロマンス」Romance de Amor
Flamenco Guitar Master Vicente Gomezというのにビセンテ・ゴメスのギター演奏の映像がアップされているのですが、これがまた凄い迫力があります。
リンクが切れていなければ、その迫力のある演奏が聴けます。
四十数年前まではビセンテ・ゴメスの「愛のロマンス」Romance de Amor の楽譜はギターピースとして販売されていたのですが、いまは絶版になっていて市内の図書館では見つけられませんでした。
イエペスの映画音楽のである「禁じられた遊び」はすぐ見つかるのですが、このゴメスの「愛のロマンス」Romance de Amorの楽譜はまったく見当たらのは本当に残念です。
とはいっても、たとえこの楽譜が入手できたとしても、ゴメスのようにはギターを弾きこなせるはずもありません。
ところが最近になって、偶然にもビセンテ・ゴメスの「愛のロマンス」の古いスコアを古書店で見つけることができました。
このゴメスのギターアルバムのなかに名曲「愛のロマンス」のスコアが含まれていました。
たしかにこれはゴメスのギタースコア集なのですが、何だかどこか違っているようにも思えるのです。
それからしばらくして、本箱の隅の古いスクラップブックの中から偶然にも、これまた古い手書きのスコアが数枚出てきました。
それを開いてみて、我ながら思わず驚いてしまいました。
それは稚拙な手書きの楽譜でしたが、それは半世紀以上前、友人が持っていたビセンテ・ゴメスの「愛のロマンス」のスコアを借りて書き写したものでした。
当時、小学生か中学生の頃だったと思いますし、しかもわたしが始めて「愛のロマンス」のレコードを買う前のことだったような気がします。
スコアを書き写した記憶はあったのですが、いつの間にか無くしたものと思っていました。
それが突然目の前に出てきたのですからびっくりです。
その手書きの古いスコアが何とも懐かしく、かつての旧友に再会したような気分になりました。
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