時代小説「時鳥の啼く頃」柳川情話を上梓しました!
水郷柳川について
柳川は水郷ともいわれるように街中を縦横に掘割が走っていて、これが柳川独特の景観になっています。
水辺に町並みがある、あるいは水路・運河の通る町並みというと、イタリアのベネチアの景観を彷彿とさせます。
柳川は戦国時代の蒲池氏の城下 (柳河城)として、その後安土桃山時代には田中吉政が入府し、さらに江戸時代には猛将として知られた立花宗茂の柳河藩13万石の城下町として発展してきました。
その過程で軍事的城塞造りや治水工事によって、現在の柳川特有の掘割の景観が形成されていったのです。
柳川の掘割は歴代の領主による治水工事でここまで営々と整備されてきたものでしたが、江戸時代当時とほぼ変わらない300年にわたる水路施設をいまも随所に残しているのがその特徴なのだといえます。
もともとこの土地一帯が有明海にも近くて低湿地帯であるのですが、排水路としての掘割の整備によって治水を改善してきたことで、その結果柳川周辺は水路の間に町並があって、しかもそれらの町並を囲むようにいくつもの水路が縦横に流れている今のような景観となったのです。
それと同時に湿地帯に囲まれた田畑を守るための治水ということもあるのですが、戦国期を含めて防衛上の水路を工夫して整備しているのもその大きな特徴だといえます。
実際にかっての柳川城は周囲を二重、三重に水路で囲まれていたわけで、これよって難攻不落の水城として軍事面では防御できたのです。
それが現在の堀割設備であって、城下周辺の水路沿いの主立ったや寺社などは、かつての柳川の古地図と変わらぬ位置にそのまま残されていることになります。
しかも、かっては多くの掘割そのものは運河として貨物の輸送にも活用されていただけではなく、その水自体は住民の飲み水や生活用水としても使われていたのだといいます。
いまではその掘割りも綺麗に整備されて、柳川は見た目にもひなびた観光地の風景が広がっています。
柳川といえば、現在ではもっぱら小舟による観光川下りとウナギ料理が有名ですから、昼時になると市内各所にある店舗からウナギを焼く煙とその香りがそこらに漂います。
これがすごく鼻を刺激して空腹感が増してきます。
町中を散策すると掘り割りの両側に風情のある古い建物が並んでいるのですが、江戸時代当時も掘割の両側にはたくさんの商家か並んでいました。
商家は掘割に隣接していることから、舟による荷駄の輸送や積み下ろしには至極便利であったと思われます。
柳川の町筋ではそうした街独特の暮らしに即した施設が各所にあって、市内を散策すると水郷としての意外な発見があります。
たとえば柳川では掘り割りに面して、各家々には水くみ場が設けられています。
かっての商家や武家屋敷にはこうした掘割からの石段の上り口が設けられていて、そこから小舟に乗ることも出来たし、婚礼の時は道路を使わずにこうした船着き場からそのまま家から家へと花嫁の輿入れが行われていたのです。
柳川ではいまでもそうした婚礼儀式の伝統が残されていて、川沿いを歩いているとときたま目にすることがあります。
地方都市である柳川は鄙びた風情があるのですが、観光事業にはそれほど積極的ではないようにも見えますし、それこそ観光資源としての立地条件や要素は十分揃っているのに、個人的には何やらそこらはもったいないことに思えてしまいます。
時代小説「時鳥の啼く頃」柳川情話について
戦国時代を題材にしても良かったのですが、作品には叙情的風景として反映されるのに適した時代背景そのものが必要であったのですが、まず柳川の掘割が縦横に巡る水郷風景を目にしたときには、やはりこの土地では男女の初々し恋愛劇がもっとも似つかわしいのではないかという着想が浮かんできました。
恋愛は常に偶然の出来事のように見えていても、けっしてそれ自体は偶然などではないのです。
歴史のある古い城下町柳川であるからこそ、尚更そこには恋愛劇というものが介在しなくてはならないという必然性があると思えるわけで、むしろ物語としての恋愛劇が当地にあって当然ではないかという、強い想いがありました。
以下の通り、本書には四作品を収録しています。
よろしかったら手に取って読んでみてください。
[目次]
1 「頼むぜ辰造」
2 「外は満天の星空」――山小屋の為蔵
3 「釣り竿の詩」
4 「時鳥の啼く頃」――柳川情話
登録情報
- ASIN : B0CXJ558W7
- 発売日 : 2024/3/7
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 597 KB
- 同時に利用できる端末数 : 無制限
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 135ページ
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